現場で原因探しの「なんで?」を人に向けると、相手は守りに入り言い訳が出て、朝礼が犯人探しで終わってしまう。物と手順の原因は徹底的に洗いつつ、人には「何があればできそう?」と前を向いた問いを向けることで、話が次の一手へ進む。
朝礼で人数が足りない。資材が足りない。前日の段取りと違う。そういうとき、つい最初に出てくる言葉が「なんでそうなった」ではないでしょうか。
たとえば、ある職人が時間に遅れてきたとします。「なんで遅れた」と聞けば、電車が、道が、前の晩が、と理由が返ってくる。こちらはそれを聞いても腹の虫がおさまらないので、もう一段強く「それは言い訳だろう」と返す。相手は黙る。場の空気が重くなって、その日一日、妙に距離ができる。
段取りミスでも同じです。「誰がそう決めた」「俺は聞いてない」。原因を探しているうちに、気づけば犯人探しになっている。現場はまだ一ミリも進んでいないのに、朝の三十分が消えている。こういう時間、思い当たる方は多いと思います。
アドラー心理学をベースにコーチングをしている立場から見ると、ここには問いの向きの問題があります。
アドラー心理学では、人の行動を「過去に何があったから、こうなった」と後ろ向きに説明するより、「その人は、いま何に向かおうとしているのか」と前を向いて見ます。原因ではなく、目的のほうから人を見る、という考え方です。
人に向かって「なんで?」と聞くと、相手は過去の自分を守る方向に頭を使います。責められていると感じるからです。だから言い訳が出る。言い訳が出ると、こちらはさらに攻める。この往復は、どちらも悪気がないのに、現場を一歩も前に進めません。
誤解してほしくないのは、原因を調べるな、という話ではないということです。墜落や資材の落下、寸法の食い違いといった事実は、原因をきっちり洗わないと次も起きます。ただ、そこで洗うべきは「物と手順」であって、「人の性格」ではない。手すりが外れていた理由は徹底的に調べる。でも「あいつはだらしないから」は、調べても何も変わらない。
物と手順には「なぜ」を向ける。人には「これからどうするか」を向ける。この使い分けができている現場は、朝礼が短いです。
言い方を少し変えるだけで、相手の頭の使い道が変わります。
「なんでやってないんだ」の代わりに、
「何があれば、できそう?」
足りないのが時間なのか、人手なのか、情報なのか。本人の口から出てくれば、こちらが手を打てます。
遅れてきた相手には、理由をひととおり聞いたうえで、
「で、次に同じことになりそうなとき、どうしようか」
責めずに、次の一回に話を移す。これだけで相手は守りから出てきます。
元請や他業種とぶつかったときは、
「お互い、今日どこまで行けたら一番いいですか」
立場が違っても、行き先は案外近いことが多い。先に行き先を並べると、途中の文句が減ります。
もうひとつ。相手が動いてくれたときに「よくやった」と上から評価するより、「助かった、おかげで午後が楽になった」と、自分がどう助かったかを伝えるほうが届きます。評価は上下を作りますが、ありがとうは横に並べます。
「なんで?」が口癖になるのは、それだけ現場を背負っている証拠だと思います。責めたいわけじゃない、ただ前に進めたい。その気持ちを、問いの向きを少し変えるだけで、相手にもそのまま伝わるようになります。
明日の朝礼、一回だけでいいので「なんで」を「どうしようか」に置き換えてみてください。返ってくる言葉が、たぶん変わります。
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