建設業の技能伝承がOJT任せの「見て覚えろ」では成り立たなくなり、育成を仕組み化しデジタルを活用する動きを扱った記事。若手定着に向けた教育の体系化が論点。
ITmediaの記事が、建設業の技能伝承を取り上げています。論点は、これまで現場のOJT任せ——いわゆる「見て覚えろ」——で回してきた育成が成り立たなくなってきたこと、そして育成を仕組みとして組み立て直し、デジタルを活用する動きが出てきていることです。若手をどう定着させるか、そのために教育をどう体系化するかが焦点として扱われています。
ここで押さえておきたいのは、記事が言っているのは「職人の教え方が悪い」ということではない、という点です。教える側に十分な時間と人数があった頃は、背中を見せる育成が最も効率のよい方法でした。前提が変わったから方法も変える、という話だと私は読みました。なお記事の掲載日は出典元でご確認ください。本稿は記事の内容を私なりに整理したもので、記事に書かれていない事情は含めていません。
足場の世界でこの話が一番はっきり出るのは、実は現場作業そのものより「図面と書類」の側だと感じています。
例えばくさび緊結式の計画図。躯体の寸法を拾い、割付を決め、壁つなぎの位置を落とし込み、部材を拾って数量表にまとめる。この一連は、手順が言語化されていれば未経験者でも一定のところまで到達できます。逆に言語化されていないと、「先輩の図面を真似る」しか手がなく、なぜその位置に壁つなぎを置いたのかという判断の根拠が引き継がれません。根拠が引き継がれないまま人が入れ替わると、現場条件が少し変わっただけで図面が崩れます。
労基へ出す書類も同じです。どの工事でどの届出が必要になるのか、添付する図面に何が描かれていなければ差し戻されるのか。これは経験則の塊に見えて、実際にはチェックリスト化できる部分がかなりあります。属人化したままだと、担当者が抜けた瞬間に提出が止まる。仕組み化というのは、この「止まらないようにする」作業のことだと理解しています。
そして、図面と書類は現場に出られなくても取り組める仕事です。ここが記事の論点と足場業界の事情が交わるところだと考えています。
足建STUDIOは、大規模修繕と解体工事で、くさび緊結式・単管・枠組み・次世代足場の計画図を作ってきました。その経験から言えるのは、作図の力は「センス」ではなく「手順の積み重ね」だということです。どこから測るか、どの順で線を引くか、どこで整合を確認するか。これを分解して渡せば、伝わります。
現在、怪我などで現場を離れた職人の方に向けたCAD教育サービスを準備中です。以下は私見ですが、現場で足場を組んできた人がCADを覚えたときの強さは、未経験者がゼロから学ぶのとは質が違います。組める人は、図面を見た瞬間に「これは実際に建たない」と気づけるからです。その感覚は座学では身につきません。逆に言えば、現場経験という一番時間のかかる部分をすでに持っている人に、作図の手順だけを渡せばいい。育成の仕組み化という記事の論点は、業界全体の新卒育成だけでなく、こうした再教育の文脈でも同じように効くはずです。
もうひとつ私見を加えるなら、仕組み化は教える側の負担を減らすためのものでもあります。「見て覚えろ」は、教える側にとっても実は重い。説明の言葉を持たないまま、何度も同じことを言い直すことになるからです。手順を一度書き出しておけば、次の人には書いたものを渡せる。育成の話は、若手のためであると同時に、今いる職長や現場代理人のための話でもあると思っています。
図面や届出書類の作り方を社内でどう引き継ぐか、迷っているところがあれば、一度お話を聞かせてください。
労基提出図一式、強度計算書、道路占用・使用図面まで対応しています。
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