足場図面は外注できます。描ける人も、描ける会社も、以前より確実に増えました。
ただ、どこに出すかで、その後の現場の回り方はかなり変わります。今回は、図面の外注が「代行」で終わるときと、そうならないときの違いを書きます。
足場図面の外注は、たいてい「作成代行」と呼ばれます。分かりやすいからです。何をする仕事なのかが、一行で伝わります。
ただ、代行という言葉には含みがあります。言われたことを、言われた通りにやるという含みです。そしてこの言葉は、責任の範囲に線を引きます。
線を狭く引くほど、受ける側は楽になります。渡された竣工図の通りに描き、指示された仕様の通りに納める。それが現場に合っていなかったとしても、指示通りに描いた以上、こちらの落ち度ではありません。
ただ、その楽さは消えていません。移動しているだけです。そしてたいていの場合、移動した先は現場です。
竣工図の通りに描いた。指示された通りに描いた。それなのに現場に入ると、隣地との離れが足りない。庇が出ている。図面にない物置が建っている。地盤が下がっている。
こういうとき、原因を誰か一人に求めたくなります。ですが、たいていの場合は誰も間違えていません。
三者とも、自分の持ち場は果たしています。それでも図面は現場と合わない。これは人の問題ではなく、情報が渡る経路の問題です。
人の問題なら、注意すれば減ります。しかし構造の問題は、注意しても減りません。構造でしか直せない。だから、渡し方そのものを変える必要があります。
言葉で「パートナーです」と言うのは簡単です。ですから、具体的にどこが違うのかを場面で並べます。
| 場面 | 代行として動く場合 | パートナーとして動く場合 |
|---|---|---|
| 受け取るもの | 指示 | 状況 |
| 図面と現場の食い違いに気づいたとき | 指示通りに描く | 描く前に伝える |
| 図面を見せるタイミング | 納品時 | 描いている途中 |
| 仕様の判断 | しない(指示を待つ) | 材料を出して一緒に決める |
| 書類の扱い | 図面を描いて渡す | 提出して通る形にして渡す |
| 仕事が終わる時点 | 図面を渡したとき | 現場が組み上がったとき |
形状が単純で、変更の見込みがなく、図面が出ればいい案件はそうです。そういう仕事は、速くて安い方が正解です。すべてをパートナーでやるべきだという話ではありません。問題は、条件の難しい現場まで代行の範囲で処理してしまうことです。そのときのしわ寄せは、必ず現場に出ます。
竣工図と現況が違うことは珍しくありません。増築されている、庭に倉庫が建っている、ダクトがせり出している。図面には載っていません。
これは以前まとめました。詳しくはなぜ現地を見てから描くのか——竣工図だけでは足りない理由をご覧ください。
完成してから見せると、直すときに全体が動きます。途中で見せれば、直すのは一部で済みます。手戻りは作図の精度ではなく、確認のタイミングで決まります。
この点は足場図面の外注で手戻りが起きる理由で詳しく書きました。
図面の上では成立していても、実際に組む側にとって無理がある納まりがあります。壁つなぎが取れない。開口部が確保できない。資材の搬入経路がない。
聞けば手間が増えます。返事を待つ時間も要ります。ですが、聞かずに描いた図面は現場で書き直されます。そして現場で書き直された図面は、労基に提出したものと違うものになります。
図面が描けていることと、書類として通ることは別の話です。足場設置届には添付すべき書類があり、道路を使うなら占用と使用で申請先が分かれます。
足場の種別が途中で変わる。工期が延びる。隣地の使用許可が下りない。これは事故ではなく、起きる前提の出来事です。
ですから私は、現場が組み上がるまでは常に変更があるかもしれない、という前提で構えています。図面を納めたあとも、連絡が来たらすぐ動ける状態を保っておく。
これは「変更なら何度でも無償でやります」という意味ではありません。変更が出たときに、こちらの都合で待たせないという意味です。現場が止まる原因は、作業そのものより待ち時間であることの方が多い。図面が直るまでの一日と、連絡がついて手が動き出すまでの三日とでは、後者の方が効いてきます。
納品した時点で一件を閉じてしまうと、変更のたびに段取りを組み直すところから始まります。現場が組み上がるまでを一件と捉えておけば、その組み直しが要りません。
パートナーという言葉は、しばしば「何でも引き受ける」という意味に取られます。私の考えは逆です。
自分の手に余ることを黙って引き受けると、期日の直前になって迷惑をかけます。しかもそのときには、他の手を打つ時間がもう残っていません。これが一番の裏切りです。
足場図面は、精度で価値が決まる仕事です。線一本の判断が、現場の安全と、書類が通るかどうかに直結します。だから、精度を保てない条件は先に伝えます。納期が厳しいなら厳しいと言い、扱ったことのない工法なら扱ったことがないと言う。
そのうえで、どこまでなら確実にできるかを提示する。これも仕事の一部だと思っています。
名乗るのは簡単です。この記事のような文章を書くことも、正直なところ簡単です。
実際に決まるのは、そこではありません。現場で何かが起きたとき、相手が最初に開く連絡先がどこか。そこで初めて決まります。
図面を発注する相手ではなく、判断に迷ったときに相談する相手として選ばれているかどうか。私はまだその途中にいます。だから、一件ずつやるしかないと思っています。
外注先を選ぶときは、価格と納期が先に目に入ります。それは当然です。ただ、条件の難しい現場を任せる相手を選ぶときだけは、「食い違いに気づいたときに、この人は言ってくれるだろうか」を一度考えてみてください。そこが分かれ目になります。
大規模修繕の仮設計画図から、労基提出書類・強度計算書・道路占用図面まで対応しています。
「これ、そもそも図面が要りますか」という段階のご相談でも構いません。
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本記事は、図面作成を請け負う立場から仕事の進め方についてまとめたものです。特定の同業者や取引先を指したものではありません。